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しょうぶ学園のこと

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アーツカウンシル新潟主催 語りの場vol.16 「”できること”からはじまる表現‐福祉施設における創作活動を考える」


しょうぶ学園

しょうぶ学園を知ったのは友人から紹介された一本の動画でした。

その動画がこちら。


一滴の向こう側『しょうぶ学園』

 

しょうぶ学園は、九州は鹿児島県にある障害者の就労支援をしている施設です。でも、ここが他と大きく違うのは、従来の下請け的生産活動では無く、クラフト工芸活動を中心にした利用者の個性を発揮した環境づくりをしていることです。普通の就労支援施設は、外からの与えられた仕事をいかに効率よくこなすかということを中心に考えられて来ましたが、ここでは利用者さんが自分の好きなように創り出すことをメインに環境を整えています。

 

しょうぶ学園の変遷

しょうぶ学園が設立されたのは1973年。現学園長である福森さんのお母さんが設立されたそうです。そのころは今のような環境ではなく、与えられた仕事をいかに出来るようにするかという教育と訓練の指導だったそうです。

 

福森園長がしょうぶ学園に入ったのが1985年。しかし、この頃はまだまだ現行のやり方だったそうですが、どんなに言っても伝わらない利用者さんとともに大変苦労されたそうです。そして、その頃から下請け的生産活動を辞め、自分たちで一貫して制作販売するという形に変えて行きます。

 

今でこそ、障害者のアート活動というものはある程度認知されて来ていますが、今から40年近く前にそれを実行したことに驚きを隠しえません。当時の苦労は計り知れないものがあったと思います。そして、2006年に自立支援法が設立されたことから学園の方針を大きく変更し、外に開かれたしょうぶ学園が出来上がっていきました。

 

民芸との出会い

福森園長が影響を受けたのは松本民芸家具の創始者、池田三四郎さんに出会ったことだそうです。池田さんという方は柳宗悦の民芸論に感銘を受け、研究・技術習得に励んで家具づくりの道に進んだ人です。少し長いのですが、テキストにあった文章をそのまま掲載します。

[池田三四郎氏との出会い]~三義さんの椅子

民芸のこころは、森羅万象に学ぶ自然体の考え方や真の美や調和について深く繋がり、人間力と本能の力を育てることであるということを知った。以来、私は、美しさは心で見えるものなのだと理解している。

 このような出会いを経て、福森園長は次第に気づき始めます。下請けではない、オリジナルなものとは何か。利用者さんたちにはちょうど良いという加減がわからない。しかし、自分のちょうど良いは誰のちょうど良いなのか。そう考えると、何かを模倣して作るという行為は自分たちのちょうど良いに従わせているだけで、真に利用者さんのちょうど良いではないのではないかと。

 

作品を作るとき、私たちは出来上がった完成形を夢見て今を苦しむけれど、利用者さんたちは今を楽しむことしかしない。だから、木を削って器を作るときでも製品を作りたいのではなく、ただ木を削ることが楽しいのだと。

それは大きな気づきで、それまで社会福祉など勉強したこともなかったからこそ生まれた考えかもしれません。利用者さんたちは今が楽しいのに、私たちはその先を考えて今を楽しむことを忘れていると。

 

しょうぶ学園のアートとクラフトの考え方

しょうぶ学園にはアート部門とクラフト部門があります。

クラフト部門では、先にデザインがあってそこに利用者さんが作ったものをマッチングします。アート部門とは、利用者さんが作ったものを職員が工夫して様々な作品に仕上げて行きます。そこでは、利用者さんが作ったものを何に応用するのかを見極めることの出来る職員が必要になってきます。職員の方々も作品作りを学ぶ必要が出てくるわけですね。そこから職員と利用者さんのコラボレイトが始まり、素晴らしい作品が誕生していきます。

 

また、福森園長が大切にしていることに制作過程を重要視するということがあります。障害を持った方たちが過ごす制作過程の時間は、私たちが制作する時間とは違うことを認め、作品の結果よりも過程が大切であることを強調されています。制作過程自体に芸術性が存在していて、それを大切にすることが障害者の生き方(表現)を肯定し全人格が認められることになるのだと。そして、それが障害者が自立という環境を獲得することになるのだと。

 

最後に

そして、支援者も表現者であるとも言っていました。それぞれの違いを認め、価値観の違いを認めること。それが、お互いの幸せに通じます。障害者が伝えていることは私たちにも当てはまることばかりです。人として、相手を認めて尊重する。それはどういうことなのか。それを障害者の方たちは教えてくれているように感じました。

私は、障害者の仕事に携わっているわけではありませんが、何故だか感じるものがあって今回の講演会に応募しました。今、私たちに必要なこと、それがこの中にありそうに感じたからです。これからも、このしょうぶ学園に注目して応援していきたいと思いました。

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